ダイナミックドライバの共振
古くはソノベさんがMDR-EX1000で問題にしていた5〜6kHz帯に現れる鋭いピーク。
データをみても殆どのシングルダイナミックドライバのイヤホンにこれは発生していて、多分ですが何らかの共振だと考察されていました。
音質に決定的に影響を与えると思われるこの共振。
一体どのような原因で起こっているのでしょう。
ハウジングの共振の考察
カプラーの長さによって変化しないことから、この共振は外耳道側ではないところで起こっていると思います。
つまりはハウジングの長さで発生している共振ではないかと推測出来ます。
1DDのハウジングは必ず空気抜きのベント孔を一つ用意しなければなりません。
そうしないとドライバの制動がうまくいかず故障の原因となるからです。
つまりハウジングは片側閉管の音響管とみなすことが出来そうです。
ここでEX1000のおおよそのハウジングの長さを計測してみました。
ステムの入り口からベント孔までで約15mm程度。
これを片側閉管の音響管とみなして計算してみると、大体5.6kHzに共振が発生する計算になります。
周波数特性のグラフをみても大体その位置に共振は発生しています。
参考
https://crinacle.com/graphs/iems/sony-mdr-ex1000/
http://sonove.angry.jp/sony_MDR_EX1000.html
次にZirco Tenoreの長さを計測。
ステムの入り口からベント孔まで約13mm。
これを片側閉管の音響管とみなすと6.5kHzに共振が発生する計算です。
私の計測した前回のデータを見ていただいても大体そのようになっています。
まとめ
カナル型の1DDの欠点というか特徴として言えることは、ハウジング内の共振が発生することだと推測したい。
これはBA単発や1DD+BAなどのハイブリッド型では発生してないように見えるので、1DDイヤホンを設計する場合は気にしなければならないポイントなのでしょう。
TZ700やA8000、それ以上の値段がするような高級機でも多かれ少なかれこの共振は発生しているように思えます。
この共振を高音の味と表現するのもそれはそれで趣深いのかもしれません。
ただフラットな音質という表現にはどうしてもならないのかなとは思います。
勿論1DDには1DDの良さが当然ありますが、ハウジングの長さによって共振が起こっていることは頭の片隅にでも入れておいて頂けると良いかもしれません。
しかしイヤホン設計とはミリ単位の数字の差で音質が変わるとても面白い世界です。
職人に向いていて、だからこそ日本の高級機は評価されるのかもしれませんねえ。
※補足
BAドライバのみの構成ですとベント孔が必要なくなります。
よって両端閉管の共振になり、ハウジングの長さが11mm程度だとすると15kHzあたりに共振が出来ることになります。
見る限り大体そうなっているかも?
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